雑貨に恋した男たち
雑貨屋さんと言えば、どんなイメージがあるだろう?こだわりのあるモノ、手工芸のモノ、個人作家さんのモノを集めたお店などなど。
今回は、山鹿の八千代座周辺の男性店主のお店三軒にスポットを当ててみた。
こんにちは井上さん。井上さんは開業12年目。「海越屋(みこしや)」さんという看板でお店をやられている。
置いてあるモノは「竹工芸・来民団扇・お香・革小物」和の雑貨屋さんという感じ。まずはお店を始めたきっかけを教えてください。
「山鹿の冬のイベントの百華百彩がきっかけですね。僕はその時大学四年生だったんですが、祭の実行委員でした。今ちょうど百華百彩の時期でして、未だに携わっているんですが…」
そうなんですね!見ました、竹灯りですよね。百華百彩の方は次回特集しますよ!では、そういう祭を通して山鹿でお店をしようと?
「はい、そうです。元々山鹿の人間ですし、最初はお店をしたいというより動く拠点が欲しかったのが大きいですね」
井上さんと言えば歌舞伎の実行委員長もされて、車夫もされて、いろいろされていますよね、大変ではないですか?
「いいえ、まあ好きでやっていますから。でもお店を続けることを一番に考えていますよ。確かにいろいろな経験をさせて貰ってますが、どうにか全て繋がらないかな〜と」
なるほど。ではいきなりで申し訳ないんですが、井上さんの思い出深い雑貨を教えて下さい!
「やっぱりコレですね『竹あかり』」
何故それを?
「僕のお店はいろんな作家さんのがあるんですけど、これは僕が作っています。百華百彩のテーマでもある竹灯りですが、このプロダクトを通して色んな方と話せるんですよ。自分自身のことも話せるし、初めて話す人との橋渡しになるんです」
では、これからのお店の目標を教えて下さい。
「そうですね、結構長い間お店もしていますし、祭やイベントもしていますので、若い方や新しく山鹿に来られる人にアドバイスが出来るようなお店になったら良いかなあ。ただモノを売るだけじゃなくて、人と人を繋げてあげれるようなお店でありたいと思います」
あ、そうでした井上さん。リボンの小林さんから質問を預かっていました。小林さんからの質問、10年後どうなっていたいですか?
「(笑)そうですね、今していることの動きがもっと良くなっていたいと思います。まあ、もっと儲けたいですね。そしたら山鹿も良くなっているでしょうから」
ありがとうございました。
続きまして。今度は野田商店の二階にある「すみや荒物店」さんです。
こんにちは前田さん。店主の前田さんは開業三年目の「陶磁器・日用品」がメインなお店ですね。お店を始められたきっかけは何でしょう?あと荒物って?
「荒物は、今で言う日用品ですね。昔は荒物・金物と分かれていました。始めたきっかけはそうですね。私自身、モノが好きなのはあったんですが、段々とモノを作っている人も知りたくなりまして、だったらしてやろう!と」
おースゴイ大胆な感じですね、趣味が本職になったような感じなんでしょうか。
「いえ、そんな大胆でもないんです。始めは、というか今もですが週末のみの営業とさせて頂いています。仕事も別にしていますし、私の中ではですけど、同じ仕事をしているような感覚で楽しくしています」
先程の井上さんもですが、いろいろなことをされていました。同じように質問しますが、大変ではないですか?
「はい、正直大変と思う時があります。でも、本当に別々という感じではなくて、もう少し広い視野で見たいという想いと、もう少し時間が経てば、雑貨屋とか色んな所に進出していますよね?本屋さんとか。だから、別に良いんじゃないかな、と。数年後は上手くミックスしていれば良いなと思っています」
確かに、今は雑貨屋さんが色んな職種に広がっているような気がします。
それでは、前田さんの思い出深い雑貨を教えて下さい!
「これですかね、柳宗悦さんの『掛け軸』です」
何故それを?
「私が若い時に、小代焼のふもと窯の井上泰秋さんの所に通っていました。そこで「民藝」を知り、熊本の民藝館に通うようになりました。「民藝」は知れば知るほど面白くて、その時の新鮮な気持ちを忘れないようにと覚悟の意味を込めて、この掛け軸を購入しました」
いきなりですが井上さんからの質問、どうしてそんなにアイデアが出るんですか?
「うーん、必死なんだと思います(笑)。確かに、イロイロ変な考えもありますけど、山鹿という地域を考えた時に、今がチャンスのように思います。だから考えたらすぐ実行に移したくて声に出してしまいます」
では今後のお店の目標を教えて下さい。
「そうですね。御存じでしょうけど、ジーンズを数名で作っています。今、お店の中にジーンズも置いてまして試着室も作っているんですが、別の団体の商品になるんです。ですので自分のお店のオリジナルというのを、いつか作りたいと思います。自分自身、好きなモノを置いている感覚なので、自分の思う良品を増やしていきたいですね」
ありがとうございました。
三軒目は開業6年目の「Folk Material Reborn」さんです。
置いてある雑貨は「インド系のアンティーク織物・民族衣装・ポーランドの器・イコン」などなど
こんにちは小林さん。お店を始められたきっかけを教えて下さい。
「私は山鹿の百花堂さんがされている湯の端美術展がきっかけです。元々、数年間京都でアクセサリーを作って販売していたんですが、地元の熊本で仕事をしたいと思いまして、熊本市のシャワー通りにお店を出していました。2012年の湯の端美術展に縁あって出店した時に、山鹿って自分にあっているかも、、と思いまして、それからですね」
山鹿の方ではないのですね、熊本のシャワー通りから山鹿の九日町って大分イメージ違いますが、大丈夫でしたか?
「山鹿のレトロな感じは好きですよ。街もですが、このお店の雰囲気がとても気に入りました」
他地域から来られて山鹿のメリットみないなのは感じますか?
「そうですね、山鹿は八千代座もあり歌舞伎もあって観光地ですよね。都会の方から来られる御客様が多いと思います、地元の人は雑貨が好きな人とかですけど。前に居たシャワー通りの方は、観光客の人は行かないと思います。そんな違いはありますよね」
確かにそうですね。豊前街道もあってレトロチックな風情はすぐには作れませんよね。それでは小林さんの思い出深い雑貨を教えて下さい!
「母が作っている『髪留め』です」
何故それを?
「これはインドの生地を使って、丸まったりするんですけど、母が居る時は生地を選んで頂いてオーダーして作れるんです。20分くらいかかりますけど。せっかく山鹿に来られたのだから、少しでも思い出になるモノをと思いましてオリジナルで作っています」
では小林さん。前田さんから質問です、山鹿の街は何点ですか?(100点中)
「50点。山鹿は自分の中ではですが、まだもっとやれる。という期待値を込めて」
低い点数のようですが?
「例えば山鹿の家賃って安いと思います。ですので、若い方や意欲のある人がもっと参入してきて、いろんな個人商店が増えて、もっと魅力のある活気のある街になればいいなあと思います。そしてそうなった時に100点になるのかなあと、伸びしろがあると思います」
潜在能力があるということですね!ではこれからのお店の目標を教えて下さい。
「ちょっと抽象的になりますけど、私のお店のテーマがヘンゼルとグレーテルなんです。森で迷ってお菓子の家に出会いますよね、そういうファンタジー(異世界)のようなお店を作っていきたいと思います」
例えば扉を一枚入ったら山鹿ではないような感じですか?
「そうですね、何ここ?!という感じです」
ありがとうございました。
今回、三軒の男性の雑貨店を御紹介したけど、どのお店もこだわりがあって、いろんな想いを持たれていることが分かった。これは雑貨店に限ったことではなくて全ての個人商店に共通していることなんだろうけど、皆さん「自分の世界」を持っていて、その世界を紹介したくてお店をしているということ。
携帯電話で簡単に好きなモノを買える時代に、あえて家賃を払いながらお店をされているのは、自己満足の先に「伝えたい何かが」あるからと強く感じた。
雑貨の境界線は無くなってきているようにも見える。違いがあるとすれば選んだ店主の思いがあるかないか、扉を一枚開ければそこには違う世界が本当にあるのかもしれない。(佐枝)
【ショップ情報】
「海越屋」 10〜18時・定休日不定休/電話 0968-41-4101 web
「すみや荒物店」 11〜18時・定休日不定休/電話 0968-41-9509 web
「Folk Material Reborn 」 11時〜18時・定休日不定休/電話 0968-36-9322 web